土佐高校俳句同好会 句集 「星河」
「多くの中学生や高校生は自分と同類の輪の中に入りたがり、時には、突出した個性の芽は摘まれることさえあるかもしれません。しかし、俳句同好会では全く違う個性を持った人たちが、座を囲みます。互いを理解し合うのに、時間は要するものの、互いの個性を受け入れ、認め合うことができる私たち部員一同にとって大切な場です。この環境に身を置けたこと、そして俳句という一つの文学を通じて、自己表現の仕方、人との関わりをはじめとする多くのことをまなぶことができたことは私たちにとっての大きな財産です」
土佐高校俳句同好会 部長 宮玲奈 〈おわりに〉より抜粋
作品(山田抄)
宮玲奈 「さよならライオン」より
石鹸玉殺意のように光り来る
俳縁といふ指切りや初燕
夏草をドナルドキーン語りけり
見え隠れする秋雲を議論する
大根一本引っこ抜きたる一行詩
川村貴子 「十七歳」より
水槽に目高十匹居て不安
非常口の人初夏へ一直線
ジクソーパズルあと一片で夕焼空
夕空のじんわり染みていく網戸
花カンナ母校更地になりにけり
塩田百音 「春を待つ」より
鮮やかにテスト挽回パセリ食ふ
空色のフェンスに朝顔咲きにけり
爽涼や遅刻三分前の彼
初恋を語る後輩秋の空
オレンジのペンのインクがきれて冬
井上祐大 「未来」より
ふるさとやレールの先に夏の海
倒れても悪人顔の曼珠沙華
臨終はまだしませんよキリギリス
本丸に少年立てり今朝の冬
時雨聞く軟禁されたようなぼく
正木僚 「静養中」より
ピタゴラスイッチ終着点のパセリかな
閉まらない網戸や祖父の三回忌
籠城は勝ち目のうすきゼリーかな
法師蝉インドの歌を覚えた日
玄関に葱ありてただいまと言う
宮脇達郎 「四分音符」より
ブランコを漕いで昔に飛び出した
終戦日明日へ持ち越す草野球
新月や消しゴム掛けを怠った
聞こえない父の怒声や冬木立
寒波来る響く音色はイ短調
坂本大輔 「冬から春」より
春雷や我が道の後ろを行く
遠足の列トンネルを貫きて
雨の夜のライトを浴びる山桜
失恋やテトラポッドの上の冬
どこにゐても躑躅の迫りゆく
「俳句甲子園奮闘記」 正木僚(一年)の文の巧みなること、非凡。
編集長 宮玲奈
発行所 土佐中・高等学校印刷室
表紙 土佐高校書道部