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金原まさ子 句集 『遊戯の家』

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まず略歴を。

金原まさ子(きんばら まさこ)

1911年 東京生
1970年 草苑に創刊同人として参加
1973年 草苑しろがね賞受賞
1979年 草苑賞受賞
2001年 「街」入会 同人
2007年 「らん」入会

句集 『冬の花』(草苑俳句会)
   『弾語り』(草苑俳句会)

     (句集巻末 略歴より)


第三句集にあたるのが、この「遊戯の家 」(yuge no ie)

2010年10月12日 初版発行 ということで
作者は、現在 99歳。

99歳であることは句集を読む上で、あくまで参考に過ぎない。
知性が、年齢に伴う情念や時代に対する哀感などにとどまることを拒否する。
残酷なまでに「見えてしまう」ことの、
垂れている血もそのままに、立ち姿、堂々。


青蜥蜴なぶるに幼児語をつかう


「なぶる」行為に「幼児語」をつかうこと、
それに対する「批評」やら「感慨」などという「まとめ」を行うそぶりは無い。
それが見えてしまったら、それをそのまま、書ききる。
見えるということ、それは、
現実のクビキを離れて、言葉同士の引力を見る、それをはばからないこと、
そんな息づかい。

俳句を書くことは、自らの「思い定まり」「ひねり方のマンネリ」からの脱出。
想像力、その運動のびのび。


真空に入り揚雲雀こなごな
日本タンポポ引金に指がとどかない
啓蟄が散らかっている小部屋だな
魂売ります紅梅が添えてある
永遠の愛誓いて兜虫差し出す
葛餅の筋肉質に歯をたてし
密告が了ると尺蠖が側にいた
すいっちょの髭触れている不整脈
正解は槍鶏頭の根方見よ
梟とあそび疲れて黄のサプリ
ペンキはがれ放題ジャコウアゲハとび放題


情報そのものは年齢を重ねない。
言葉の世界の身体も、また。
実年齢の身体にふさわしい俳句をつくる必然性などは無い。
作者の境涯を重ねあわせることでこそ得られる読解ではなく、
語と語との出逢いから立ちあらわれてくる幻の身体、
そこを共感のよりどころに出来る「読み手」を引き寄せている一冊。
季感・季語もまた、実在から虚までの運動の激しさの内庭で目撃され。



春暁の母たち乳をふるまうよ
梅咲いて腐乱始まる遊戯の家
三つ編をほどかせている夜の朧
夏の夜の零歳が見る水の夢
凝っとしているとノギクは熱を持つ


表現の工夫、その屈伸運動、やわらかく。
それは作者がネジリハチマキで行っているのではなく、
俳句形式との「じゃれあい」のようで、そのカルミ、心地よし。


つまりただの菫ではないか冬の



知の配慮と認識の奥行き、そのフカミと
言葉遊び、形式とのじゃれあい、そのカルミ。
綯い交ぜにして、凛なるかな、その句群。




放蕩や蛍を揉んでもみころす




本書は
小久保佳世子さんから拝領。
ありがとうございます。

帯文 今井 聖    著者 金原まさ子
発行所 金雀枝舎   装幀 経 真珠美
           2000円 金雀枝舎 ホームページ




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