秋の観覧車
たしか何度も一緒に来ているはずなんだけれど。
どうにも細かいことが思い出せない。
三人男ばかりの兄弟
三歳下の弟が
急逝した。
心筋梗塞
自宅でくつろいでいたところ
母の目の前で
2015年8月14日 午後
甲子園では高崎健康福祉大学の試合が行われていた。
弟が最後に目にしていたのは
画面の上の
この試合
いうまでもなく
大人になってからは
ここに一緒に来たこともなく
来ようという話さえしたこともなく
この四〇年
ほとんど姿を変えることの無い
この遊園地のこの観覧車。
観覧車は小春日の天へ近づいて
元の場所へと戻ってきて
弟のことを
亡くなってから
むしろ身近に感じるようになった。
どうしてなのだろう。
さようならを言うこともなく逝ってしまったのだから
このままさようならを言わずにおこうと思う。
閉園時間を告げる放送が
にごった音で聞こえている。